平成14年5月26日 於一の関かんぽの宿

賦青何連歌百韻

 


   緑陰をめぐり落ちゆく流れかな 八乙女由朗
   声にしてよぶほうほうほたる 丹治久恵
   山里の一つ家あはく灯の入りて 柴田康子
   風をさまりぬ杉の秀の上 塔原武夫
   ひいやりとわれとわが身の透きゆかむ 桜井千恵子
   月光浴びて海までの道 大和類子
   黄の林檎庭木に挿して鳥を待つ 有路八千代
   玉蜀黍の匂ひただよふ 桂重俊

 ウ いそいそと子らの寄りくる町の角 原田夏子
   寒行の僧眼するどし 伍井さよ
   月明りうす雪の野を蔽ひつつ 菅野哲子
   修那羅峠にゆきし日はるか 香川潤子
   下草のわづか青める楢林 坂田健
   春の虹見む娘を誘ふ 本木定子
   苧環の花に夕やみ濃くなりて 渥美佳子
   思ひ乱るるわれならずやも 伊藤洋子
   旅先にころがしてみる御殿鞠 小松久仁子
   一弦琴のほそき長夜を 遠藤幸子
   枕にぞ入れむ干菊集めたり 島田幸造
   夢に恋ひつつ榧の実拾ふ 由朗
   胸中の炎ひそむる萩嵐 類子
   珠のひとつを守りてゆかな 康子

二オ 来し方を記す齢の近づきぬ 武夫
   天井の染み見つめてゐたり 千恵子
   裏通り好んであゆむひとのくせ 類子
   冠雪白く蔵王嶺そびゆ 八千代
   神無月媒酌不在の式に出る 重俊
   初音といへる香木のあり 夏子
   薄桜逢ふすべもなき君にして さよ
   追ひてゆかましかげろふ立てば 哲子
   桑を摘むふたりに恋の芽生えくる 潤子
   降りし田舎の駅にやまがら 健
   十六夜の雲の早さを見て飽かぬ 定子
   われを包める野菊の原に 佳子
   この径をゆき甦る思慕ありき 洋子
   離りし人のたより知らずも 久仁子

二ウ 巣立つ日の鳥に托さむ吾がおもひ 幸子
   耳ほてるまで寄り添ひながら 幸造
   縄文の土器の目ざめの町おこし 八千代
   煩悩百八岩に籠めたり 由朗
   鉦たたく黒衣の尼の動くなく 武夫
   底冷えきざす古宿に着く 類子
   寒の花日暮れの雪を少し載せ 康子
   蜃気楼とも知らずあくがる 千恵子
   猫の声聞きて悶ゆるひとりもの 重俊
   つなぐ手と手にぬくみ伝はる 八千代
   紺のれん峠の茶屋の風に舞ふ さよ
   末はいかなる身とはなりなむ 夏子
   稲光去りて煌々と月の映え 潤子
   くるみの落つる音のひびきて 哲子

三オ 豊年に唱歌の中の子となれり 定子
   明るき店に鉢のりんだう 健
   隣室の秋の宴のたけなはに 洋子
   時を閉ぢ込め休日の午後 佳子
   眼をつむり地球儀まはす留守居して 幸子
   明治男はしたたかに生き 久仁子
   冬の月青きばかりの影を踏む 幸造
   つららの下る北国住まひ 類子
   自由欲る小鳥と君に呼ばれけり 千恵子
   黄泉平坂に想ふ人顕つ 幸子
   文箱より発ちくる声や空仰ぐ 康子
   夢に鮮らかおさなき恋は 武夫
   抽出しに蔵ひし記憶かさねきて さよ
   女ばかりの世にあらめやも 由朗

三ウ 天国はいづくにあらん飛機の窓 八千代
   魚うろ族くづ泳ぐ礁いくりのくぼみ 潤子
   遺水に羽觴のうかび流れ澄む 重俊
   落葉かき分け従きてゆかまし 哲子
   曼珠沙華たぎる血潮を吸ひつくせ 健
   義経静いろづく山河 洋子
   花車描ける帯をたまはれり 夏子
   春宵ながし酒酌み交はす 幸子
   どんたくのおぼろおぼろに手をとりて 佳子
   薪能にて初めて触れし 定子
   背山より聴けばきこゆる風の音 幸造
   朝ぐもりして今日の暑さよ 久仁子
   月の下いさごはいまだ灼けてをり 重俊
   その結末を如何にたたまむ 類子

名オ 高鳴ける鵙の捕へし贄の枝 潤子
   紅葉ひとひら舞ひながら散る 八千代
   庭潦跨げば映ゆるいわし雲 幸造
   ほどきし髪を遊ばせてゐる 佳子
   公園の椅子に無聊の老いをりぬ 健
   艶書いくたび読みかへしつつ 夏子
   とは思へなど離れゆかぬその面輪 康子
   乱れしままに野を駈け去れり 由朗
   里神楽鬼と化す舞のおもしろさ 定子
   障子ふるはせ伝はりてくる 哲子
   鏡面の闇深かりき水の秋 さよ
   月影さやに帰りくるなり 幸子
   冬支度終りし山の静もりぬ 健
   芒の原に口笛ほそし 千恵子

名ウ 呼ぶ声の少年やさし吾が子とも 潤子
   干し大根の香におもふ母 武夫
   疲れ目をうつして遠き景色なり 久仁子
   到来物の白魚揚ぐる 定子
   北上の河辺に透る花衣 さよ
   うぐひすの声ととのひてゆく 佳子
   露天風呂めぐる林の明るさに 幸造
   連歌巻き終ふ栗駒の宿 洋子


由朗 五 哲子 五 久恵 一 潤子 六 康子 五 健 六 武夫 五
定子 六 千恵子 五 佳子 六 類子 六 洋子 五 八千代 六 久仁子 五
重俊 五 幸子 六 夏子 五 幸造 六 さよ 六

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〜前号掲載以後〜


毎月第四日曜に歌会及研究会を行って研鑽に励んでいる。
前回以後の分は次の通りである。(桂重俊記)

歌話会の歩み
2001・
9月 「北杜歌人」第十号反省合評会
 
10月
歌会
 
11月
歌会
 
12月
総会、懇親会
2002・
1月
歌会
2月
尚歯会について(原田夏子)
 
3月
歌会
 
4月
桜井千恵子『風花の紋章』合評会
 
5月
曲水の宴見学・連歌、一の関かんぽの宿
 
6月
歌会
  7月 額田王の九番歌(桂重俊)

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