国境の女たち

暇ひまの時は彼女達は大声で故郷の歌を歌う。音楽が好きなのか、生来音感にすぐれているのか、美しい合唱だった。声をそろえて歌う「アリラン」「トラジ」「連絡船」など。ここは母国から幾山河も離れた行き止り。立場こそちがえ、オレもお前も明日なき流浪(さすらい)人びとには変りはないのだ。
神武屯まで流れて来た彼女たち。会話の中から「綏紛河(すいふんが)」「牡丹江(ぼたんこう)」「佳木斯(ぢゃむす)」など、東の国境の地名が聞かれ、ただならぬ流亡のさまが実感できる。前章でも述べたように、彼女たちの存在がわれわれ軍人たちはどれ程に心の安らぎとなったか計り知れない。満目粛々たる雪原の中でせめて日本女性の顔を見れたのはどんなに喜びだったか知れない。


私の下着革命

 一方で、男性の変質者がご苦労にも女のパンティを盗み、愛撫することがあるとも聞き、イヤな世の中になったものだと憤慨することもあった。あろうことか、実際に女のパンティを窃盗し、堂々と神聖な道場に干し並べるその現場を目撃してしまったのだ。
いやしくも武道を志す志が女の下ばきを盗むなど「絶対に許さん」「顧問は責任をとり、辞任」「合宿は本日限りで解散」激怒で身を震わせながらも固い決意のもと、マネージャーを呼びつけ、「全員を集合」を命じた。


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